自分探しより限界試し

 試験勉強をしていくと、どうしてもやる気と意欲の減退に遭遇する。どうしたらいいだろう。手っ取り早いのは、そのまま我慢をすることである。

 最近は、我慢が避けられる世情であるけれども、我慢なくして、成長はない。絶対にない。息切れ1つせずして体力など絶対に付かない。どんな技術であれ、技能であれ、我慢と忍耐を通さずして得られるものなど、ない。あっても碌なものではない。我慢と言う重みに耐えるから、心身ともに強化されていくわけで、汗の試行錯誤の過程を経るから、新しい何かが自分の中に生まれるのである。忍耐なくして、得られるものは極めて少ない。

 しかし、我慢しないように言われるようになったのにも、相応の理由はある。背景には、我慢がもとで心身を壊す人が増えたことにある。普通は、限界が近づくにつれて兆候と言うかサインが出てくるものであるが、中には、それらを抑圧してしまって、できぬ我慢を続けに続けてしまう。そうこうして、本格的に失調してしまう、というわけである。

 我慢の問題点は、自身の限界を知らないことにある。限界を超えて、我慢に我慢を重ねると、心身ともに致命的なダメージが残ってしまうことを知らないのである。限界を超えてがんばることは、目の前のことは凌げても、以後に大きな障害が残る。我々は、自分の足を食べる蛸を笑うけれども、我々も、目先の我慢だけに目が行って、後々をダメにする事態はよくあるのである。

 こう考えていくと、我慢をすべきなのかどうなのか、わからなくなってくる。我慢の問題を考えるには、まず、我々自身の限界を、よくよく知っておくことが必要である。たとえば、1日どれだけ勉強できるか、それか、1週間でどのくらい勉強ができるかを試してみるのである。わたしの学生時代の実験では、1日に20時間が限度であった。

 この限界は、これ以上は続けられないという、持続と継続の不可という意味での限界である。1日20時間の勉強なんて、1回か2回しかできないわけで、よほど差し迫った事態でない限り切れないカードでもある。つまり、ある日20時間も勉強すれば、その日はかなり堪えるけれども、耐えられなくはない。次の日も、まあ何とか凌げなくもない。しかし、3〜4日となればもう、20時間の勉強などできない。ストレスは如実に身体のあちこちに顔を出す。理解や記憶の度合いは落ち、やる気がなくなる、ぼおっとする。文字や数字は頭に入ってこない。こうした体験を通じて、勉強の限界は20時間であることが、身をもってわかってくるのである。

 限界を知る副産物は大きい。限界にまで身体と心を酷使すれば、あとあと支障が発生するので、トータルで余計に損することがわかってくる。睡眠を削りに削って、疲労を抱えて勉強する愚を悟る。無理に無理を重ねる非効率さを知る。理解も整理もせずに詰め込む不合理さを知る。だから、自分に合う計画なり進捗を考えるようになる。生活の時間をやりくりし、うまく勉強できないか、考えるようになる。自分が1番勉強できるのはどうすればいいか、わかるようになってくる。勉強とは、単にやりさえすればよい代物ではなく、自分というものを踏まえた上でやっていくものであることがわかってくるのである。

 しかし、限界については、よくよく注意をしておかねばならない点がある。それは、どういう経路を経て知ったか、である。限界は、「身」をもってでない限り、確かな基準とはならない。

 どうして我が「身」なのかと言うと、頭で考えたことや思ったことは、実に誤りが多く、当を得ていないことが多いからである。もう限界と言ってはいるが、傍目から見ればまだまだで、もっと自身を追い込まねばならないのに、または、追い込めるのに、またまた、そこまで追い込むことで次なる段階・レベルに到達できるのに、勝手に自分で限界を設けて、安住していることがある。成長の機会の完全な損失である。

 「身」をもって知ることのは、その確実性にある。我々の肉体は、頭に比べて、そう嘘を言わない。精神には勘違いが多いけれども、肉体はかなり、自身の置かれた環境を性格に現し得る。限界を知るというのは、頭脳的作業というよりかは、肉体的な我が「身」でわかっておかねばならないのである。このあたりまで、という限界域を身体でわかっていれば、それ以上はやらなくなるし、他のことで手を打とうとする

 限界を知っていれば、助力や助言も得やすくなる。自身の限界を知るからこそ、二の矢・三の矢をつがえる工夫も生まれる。我慢の一の矢だけでは、実に心もとないし、うまくもいかないだろう。そもそも、取るべき手段が我慢だけなんて、不安定すぎる。

 わたしは、自分探しなどという曖昧なことをするよりも、自身の限界を試してみる方が、よほど自分というものがわかるように思われてならないのである。

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