方法やり方あれこれ

 方法ややり方、ヒント、コツというものは、世に溢れている。おそらく方法である以上は、どれもうまくいくだろう。しかし、それらは、科学的な知識ではない。科学の要件として、再現性がある。誰でも、どこでも、何度でも、その条件と設備と環境とが整えば同じ結果が出るのが、科学的知識である。

 しかし、わたしたちの個々は大きく違っているのが現実だ。職業から仕事内容、年齢、性別、学歴から経験まで大分違う。いうまでもなく、試験勉強において、これらのことは意外に大きな影響を持っている。激務の人とそうでない人、勤務時間が定時の人とそうでない人、前提知識や経験のある人とそうでない人とは、勉強のやり方も進め方も大きく違ってくる。 方法なりやり方を見る際は、どのような条件と環境で行なわれたかを調べる必要がある。環境と条件が適合するようならきっとうまく行くし、そうでないならうまく行かないだろう。

 また、世にある各種の方法論は、経験的な科学でもない。ある方法がよいというためには、その方法をしなかった場合の実験があって成り立つ話である。 例えば、このテキストがよいというには、そのテキストを使う人と使わない人に分けて、それぞれの成績なり実力の伸びを計る必要がある。そうこうしてようやく、よいか悪いかの判断が付くわけである。例えば、「過去問演習が試験勉強で最も大事」というためには、過去問演習をした人としなかった人との合格率や成績を比較した上でなければ、科学的にそうは言えないのである。方法なりやり方を見る際は、どのような実験や検証があって、どういうデータが出たのかにも、意を払わなければならない。実験や検証の過程に欠陥があれば、引き出される結論もダメである。

 また、結果が原因に与える影響を見過ごしてはならない。ある方法が「いい」と思えるのは、その方法を取った人たちがたまたま合格したから、という疑いも捨てかねないのである。そのある方法が間違っていたり、または、多分の過ちが含まれたものであったりしても、合格という結果が後光となって、欠点を覆い隠してしまうことが多々ある。

 今となっては笑い話だが、英単語の憶え方で、辞書のページを食べてしまうというものがあった。おそらく、辞書を食べた人が試験に受かったのであろうが、辞書を食べることと記憶に関係がないことなど小学生でもわかる道理だ。が、それで合格した・受かったという後光が、その食べるという行為を何か意味ありげなものにしてしまった。実際に釣られて食べた人もいるだろう。何のための勉強なのか、実に味わい深い。

 これとは、逆のケースも考えられる。その方法を採ってはみたが、結果は不合格だった、故にこの方法はダメだという。が、単にその方法の採択者が出来の悪い人だったから、結果が付いてこなかったこともあり、方法そのものは妥当なケースもある。類は友を呼ぶ。同じように失敗した人が集まれば単なる意見は評価へと様変わりする。

 これら、後光(または、逆後光)については、テキストや問題集、過去問などの教材の良し悪しや適否によく見られる現象である。独学では、教材の実物を手にして、その適否を自分の目で確かめた上で購入するが、これは、こうした過評価や誤評価を避けるためである。

 世に多い方法ややり方というのはいわば、個人的な経験であり、特定の経験則でしかないのである。わたしがうまくいっているから、あなたもうまく行く可能性が高い、または有意であるということでしかなく、それ自体が成功を保証するものではない。ある方法なりやり方がうまくいくかどうかは、行為の担い手であるわたしたち自身に多くがかかっている。 できる人・できない人、うまく行く人といかない人を分ける境目は、その成功するものでもありまた、失敗の原因ともなる自己の発見にある。方法の適否や成否以上に、それが問題なのである。

 本音をいうなら、わたしは、結局は自分がやるしかない以上、方法論は手助けにはなるかもしれないが、自分の代わりにやってくれるわけでもないと割り切っている。また、自分で微調整をするなり、試してみるなり、工夫をしてみるなりするしかないと諦めている。 ある方法Aがあってよさげに思っても、うまくいかないときは、Aに足したり引いてみたり、Bとかけ合わせて見たり、経験や教訓であるCやDと引っ付けたりして、目的が達せられるように模索する。

 これまた、わたしの経験則だが、ある特定の方法を妄信したときが1番手痛い失敗をしたように思う。参考にはするが、頼みはしない。本当は頼みにもならない。ほどのよい距離を置き、自分で考え、確かめ、試してみる。想像したり、推測したりする。もっと知りたくなったり、または、うまくいかなかったりするときは、論証をたどってみる。頼るべきは、やっぱりそんな昔からの、常識的なやり方であるように思う。

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