能力・意欲・才能
試験勉強に限らないが、がんばったけれども成果や結果の付いてこないときはある。浮き沈みは有るのはわかっている。好調・不調の波があるのも知っている。福過はあざなえる縄の如し。正負の法則。良し悪し、愛と憎しみ、幸・不幸。そんな言葉も知っている。 とはいえ、悪い事態に陥るとやはり、やっぱり気落ちのするものである。次はあるし、チャンスでもあることはわかってはいるが、警句や故事の類では埋めきらないのである。どうしたらいいだろうか。それを考えたい。 我々は言葉でしか考えられない。だから、外からの言葉で役に立たないのなら、自分の内から力のある言葉を掘り起こさなければならない。その際は、必要性と能力、そして意欲の3つの言葉が便利である。この3点から、結果や帰結、起きたことを考えてみるのである。 どうしてそうなったのか、なぜ起きたのか、目の前の現象をどう考えればいいのか、3点の有り無しから見ていくと、置かれていた状況がよくわかる。 最上のケースから考えてみる。必要性があって、それをしうる能力があって、そして、それをする意欲がある場合である。欲しがっている人がいて、その物を作れて、売る意志がたっぷりある、理想的な商売のようなものである。3点が満ちているのなら、得てしてうまくいく。失敗は人の常、いつだってあるものだから気にせず、まい進すればよい。よくある表面だけの不安である。一掃して行けば事態は必ず好転する。 反対の、3点全てがない事態を考えてみる。する必要性はなく、する意欲もないし、その能力もない。3点ともまったくないと絶望的な感じがするが、そうでもない。今後それについては、まったく関係しなくてもよい、という心底の確信を得られるのは損ではない。少なくとも「我」のすべきはそれでないことは明らかだからだ。以降の人生でぶれることはないだろう。 以下、3つの組み合わせを見ていく。冗長になるので、忙しい人は文尾まで飛ばしてほしい。結論から言えば、3つの言葉を組み合わせてみれば、自身がよくわかるといった次第である。 「必要性はあるが、意欲と能力がない」−やればいいんだろうけど、やる気も機会もない事態である。その気がないのだから、今は無理してやる必要はない。気を熟すのを待つ。それか、将来的には必要になるのなら、本格的な勉強に備え、今は準備だけしておく。 「意欲はあるが、必要性と能力がない」−やる気だけはあるが、得てして空回りに終って消耗することが多い。やっていることのレベルは自分に適しているか、準備は十分か、そもそも、やるべき理由をきちんと見出しているか、再考してみる。 「能力はあるが、必要性と意欲がない」−やりさえすればできるのであろうが、必要性が感じられず、やる気がない状態。能力への過信さえなければ結構な状態である。要否を洗ってみて、やろうと思ったときにやればよい。 以上は、あり1・なし2のケース。以下は、あり2・なし1のケース。 「必要性と意欲はあるが、能力がない」−必要なことがわかっていてやる気もあるが、能力がついて行けてない状態。準備不足でないか、背伸びをしていないか確かめる。やるに相応しい練習や訓練をしてみる。よっぽど難しいことをしない限りは、何とかなる。 「必要性と能力はあるが、意欲がない」−非常に幸運である。本人はする気がなくても周りがそれをほって置かないだろう。しかし、能力や経験が同じなら、必ずやる気のある人に軍配は上がる。大概は順調だろうが、この点だけは注意しておくべきである。 「意欲と能力はあるが、必要性はない」−やる気とそれをこなしうる力はあるのだが、無駄なところに一生懸命ではないだろうか。だから、うまくいっていないのではないか、と考えてみる。そもそも、やる必要があるのか、とくと考えてみる。 以上、必要性と能力、そして意欲の組み合わせを見てきた。試験勉強というのは、一部の難関試験を除けば、能力という点では皆が「ある」状態である。考えるべきは、必要性と意欲の2点となる。目の前のそれがほんとうに必要なことを、どこからも借りてこない自分の言葉で言えるだろうか。言えないときは、恐らくやる気は少ししか出てないだろう。自分の言葉は、自分から探すしかない。 しかし、探したところで、それがほんとうに自分の理由なのか、訝しく思うときもあるだろう。言葉自体が借り物だからだ。しかし、それでも、残ったものから求めてみる。確信とは言わないまでも、(まあ、そうだな)くらいに信じられるものが見つかったとき、意欲の質は見違えるものになろう。そして、真に求めるものに照らされた必要性が垣間見えるであろう。 自分自身というものは、全体として理解するものではなく、ばらばらに断片的に見えてくる。わかりにくくはある。しかし、他人の道を正しく歩くよりも、迷いながらも自分の道を歩く方が、賢明であるように思う。 |
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