振り返ってみるときに

 事態がうまくいっていないとき、順調ではないとき、満たされるものがないとき、我々は過去を振り返る。それはしばしば反省という形をとる。とはいえ、考えてみれば、物事がうまく進まないときに反省するのは普通のことであって、事を為す上で当然の作業ともいえる。うまくいっていかない事態を反省し現状を分析し取れる手立てを模索した方が解決はスムーズである。よくないひとつひとつのことを遡って原因を突き止め正していけばいい。

 たとえば、勉強時間が足りないのなら、無駄だと思う時間・役に立っていない時間・無為に過ごしている時間をピックアップして、そのうちの2〜3から時間を捻出するようにすればいい。たとえば、コンビニの利用を振り返ってみる。お菓子や飲み物、食料の購入、いろいろなものの決済は必要だからやめないけれども、意識して使い方を変えてみる。コンビニでの立ち読みをやめるだけでも、結構な時間を捻出できるものである。こうした反省を通して自身を振り返ってみることで、問題点の洗い出しと解決を図るわけである。

 しかしながら、我々が本当に振り返ってみなければならないのは、よくないときではない。我々はよいときにこそ、敢えてでも強い意志を持って振り返ってみなければならないのである。それはたとえ、大量の資本に恵まれ、才能・能力、経験が十分の上に、人材が満ち満ちていても、確かなビジョンを示し指導力に富んだ神輿を担いでいるといっても、である。

 栄枯盛衰、満つれば欠く、という。大成功が大失敗に、一大立役者がドツボに嵌るには枚挙に暇がない。ある商品やサービスで名を挙げて財を成したが、飽きられて売れなくなると忽ち地獄と化した企業は、それこそ星の数だけ普通に存在している。特に、?本人たちが頑張って相応の努力をしてきた意識がある、?周りからも認められ賞賛すら与えられている、?前人未到のとびっきりの結果を出してきたときは、本当に危ない。数年前は嘘のように、坂道から転げ落ちるかのように業績事態環境は悪化して行く。

 悪化の上に悪化する原因として、過去の模倣がある。成功したこと・うまくいったことが大きければ大きいほど、それは将来的に足かせとなる。鏡を見れば汝の敵が見えると言う。それは、昔うまくいったやり方や手法を面白いように執着するからであろう。新しい事態はそれらを許さないのに、それらでは解決しないしうまくいかないのに、かつてのやり方をなんだかんだと理由を付けつつ、上も下も真ん中も固執するのである。かくして最終的な事態は何もしなかった方がよかったくらいに悪くなってしまう。

 良いときにこそ振り返ってみなければならないのは、最良のときに最悪の結果を生む萌芽が芽を出し、最高が最低を生むからである。このことは組織であれ個人であれ当て嵌まる。良くないときは言わずもがな、良いときでも振り返って見なければならないのである。

 とはいえ、振り返ってみよといわれても、何をどう見ていけばいいかわからない。では、何を求めて振り返ればよいかというと、それは、変化の有無についてである。我々はどんなに繁栄の途にあろうとも、逆境の間にあろうといえども、変化を中心に我が身を見て行かねばならないのである。何が変わったのか、何を変えたのか、そして、何を変えずに来たのか、よくよく振り返って調べなければならない。

 事態は常に同じような状態を保ってはいない。何かしら変わっている。良い状況は続かないし、悪い状況も同じように続くわけではない。何かしら変わりつつはあるのである。いくら好調で事態が明るいときであっても、ひとつひとつの変化を見落としていけば、新たな事態に対応できなくなる。できなくなるから、過去のやり方を踏襲することになる。良くない事態であれば、打って出るために、次に進むために、変化をじっと伺わねばならない。たとえ、出口が見えずとも、先が見えなくても、展望が開けずともである。

 どんな事態にあろうとも、未来永劫「このまま」であるわけはない。変化を見出すからこそ抜け出せるのである。振り返る際においては、変化という言葉に特別の地位を与え、良い悪い、好調不調、損得の壁を越えて、変化の有無を見ていかねばならないのである。

 良いときに変化を見出すことは、損失の予防・脅威からの防衛・破綻から我が身を守ることである。良くないときに変化を見出すのは、打って出る準備をし、先へ進むエネルギーを貯め、確かな方向性を確保するためでもある。5年前、3年前、1年前、半年前、1ヶ月前を、変化をもとに振り返ってみる。何の変化も見出せないときは、地獄の釜の蓋が開き始めている。変わらないから負けるのであり、変えないから敗れるのである。変化から背を向けるから滅び、変化を無視するから時代に殺されるのである。機に臨んで変に応じるべし。臨機応変の4文字には諸々の多くが込められているように思う。

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