上位3つに絞込み

 失敗や敗因、うまくいっていない事態を分析するときは、何かひとつの特定の原因や因子を探さない方が賢明である。というのも、そんなものをいくら捜し求めても、満足のできる答えなど返ってこないからである。

 失敗というのは、ひとつの原因や特殊な要因のみに拠るものではなく、いくつかの要素が複合的に重なり合って起きるものである。失敗とは真逆の成功も同様で、成功を何かひとつの理由に還元し切ることは難しい。運や巡り合わせ、順縁逆縁人の縁、有象無象の因子が絡まりあって、まるで螺旋階段のように、事態を成功へと押し上げる。失敗につけ成功につけて、特定の何かが成否を決定してしまうことなど、ほとんどないのである。

 我々は、失敗の分析にあたっては、単一の理由や原因を求めようとせず、考える素材となるものをたくさん集めていかなければならない。たとえば、うまくいかない、理解できない、憶えられないからといって、実に使いやすい言い訳である「頭が悪いから」などと飛躍して考えてはならないのである。それよりかは、読み込みが足りない、用語の検討が表面的、暗記作業が少ない、過去問の分析不足など、詳しく見ていけば数限りなく原因を見出すことができよう。

 「頭が悪い」なんて言うのは、本当に頭のよくない考えであることを、我々は深く知っておかねばならない。そんなことを言っても何も変わりはしない。望みを絶つのは愚者の証という。愚者は考えているようで何も考えておらず、事態を概観して単純な原因しか見出さないが故に愚かなのである。愚かとは、性質ではなくて行為にかかる言葉なのである。「下手な考え休むに似たり」と古人は言う。本当にそうである。愚かに考えるのであるなら、昼寝でもしていたほうがましなのである。

 失敗して(どうしたらいいんだろう)と先行きに不安を覚えたときや、うまく行かなくて(何をしたらいいんだろう)と途方に暮れたときは、それらの原因となっているようなものをたくさん考えて、集めてみることである。「暑いから(寒いから)」でも、それは十分な理由である。根拠の薄い基準や意味の有無を問わず、失敗に関係していると思えるものは何でも疑ってかかるべきである。紙に書き出してみるのもいい。もし、原因となるようなものが数多く出てこないのであれば、頭が固い、発想力がないと紙に書いておくといいだろう。十分な敗因だ。

 作業の際の注意は、どうにもならないことやコンプレックスに関わることは挙げないようにすることである。たとえば、学歴がないとか記憶力がよくないとか、先ほどの例でいった頭が悪いなどである。学歴は受験資格に関係はあるも実質的な成績と関係はない。四大卒ならプラス数点される試験を聞いたことはない。記憶力がいい人はまれだから大半の人は悪かろう。統計的にそう言えるからといっても、実際にはそうではないことは多々ある。殊に、勉強においては、それが顕著である。

 さて、さまざまの失敗の素材が集まったら、ひとつひとつの重大性について考えて行く。このときは、そうでなかったらうまくいっていったかどうかが重要度のめやすとなる。たとえば、「テキストの読み込み不足」を原因のひとつに考えるときは、テキストをしっかり読んでいれば合格していたかどうかを考えてみる。考えてみて、(うーん、そうであるかもしれぬ、そうでないかもしれぬ)と首を捻るようであれば重要度は低かろう。本当の敵はもっと他にある。「しっかり憶えなかったから」と紙に書かれてあって、(きちんと憶えていたら解けていた!)と本試験時の悔しい思い出がまざまざ沸き起こってきたなら、重大な失敗原因であろう。

 ひとつひとつに検討を加えていったら、最も致命的で重大な敗因の上位3つをピックアップする。幾つも挙げることができても、ここでは、上位3つのみに絞りに絞るのがコツである。5つ以上はたくさんである。しかも、重大な失敗原因になるくらいなのだから、それぞれの解決も難しかろう。たった3つでもおそらく解決の手に余るだろうから、4位以下の失敗はこの際切り捨ててしまうのである。そして、3つの失敗原因のみに、改善と解決の全力を挙げるようにする。全ての原因に対応をしようとして、力と時間を分散させないためである。必要があるならどんな道でも進まねばならないが、問題はどの道に進めばよいのかわからなかったのである。これでようやく、改める道筋は見えてきた。3つくらいなら何とかなる。

 忠告は、賢者から賢者へ与えられても危険を伴うという。賢者が賢者の言を受けても、他人の言葉だときちんと通じない可能性があるのである。しかし、今、内から導き出された3つは他言の何倍も強くて、そして、活力の溢れるものとなっている。自分の中から生まれ編まれた言葉こそ、生命と魂を持つ種子たる言葉である。芽が出て葉が茂るが如く、我々を次の段階へと導こう。答えの多くは自分の中にある。

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