3歩前にある

うまくいかないのが勉強の常である。すらすらとうまくいくなら、勉強する必要はない。さっと点検をするくらいで脂汗を流す必要は無い。勉強の裏の意味うは、うまくいかない諸々の問題を解決していくところにある。

さて、常日頃遭遇する「うまくいかない」であるが、この「うまくいかない」にはふたつある。良いのと悪いのふたつがあるのである。

悪い「うまくいかない」というのは、全く展望や見通しが立たない、暗夜行路中の勉強である。何度読み返してみても、ひとつもさっぱりわからない。何ひとつも、である。わかる・わからない以前の問題で、きtんと読んでいるかどうかすら覚束ない状態のことである。

この悪い「うまくいかない」は、根本的な部分に間違いがある。全くのお門違いなのに、一足先に専門的なことに着手したときに起こる。たまごを壁にぶつけるような手ごたえの無さ、無力感・徒労感を感じるときは、最も根本的な部分が間違っていないかを確かめる。パジャマを着て会社に行く人はいないが、勉強というのは目には見えないために、得てしてそうした馬鹿げたミスや過ちを犯していても、当の本人は気が付いていないものである。

完全な誤りが無いかどうかを確かめ、そこからの克服が喫緊の作業となる。悪い「うまくない」というのは、そのまま先に進んでも何の成果も無いのに愚直に行こうとするから、悪いと評価するのである。それは全くの無駄と徒労で終わるだろう。

さて、では、良い「うまくいかない」とは何だろうか。うまくいかないのに、良いとは矛盾していないくもないが、良い「うまくいかない」というのは、先々の見通しや困難の度合い、投下する努力量・作業量がつかめている状態のことである。

障害や問題の発生の予感は持っており、たとえ、そうした問題群が顕在化しても、(あーしてこーしたらいい)とか、(こうこうこうしていけば、こうなるだろう)といった見通しが立っており、すぐに達成はできないが、まあ、できるだろう、克服できるだろうという状態のことである。こうした「うまくいかない」は、結局は何とかなるわけであるから、良いと評価できるのである。

しかしながら、これは、順調ならという条件が付く。良い「うまくいかない」の最大の問題は、「うまくいくはずなのに、うまくいかない」ときである。これでいいはずなのにうまくいかないのは本当に困る。では、こうした場合にはどうしたらいいか。

泳ぎを子供に教えるお父さんが居るとする。クロールの泳ぎ方を懇切丁寧に教える。手と腕の動かし方や指先の形、息継ぎの仕方を、自分が身をもってお手本を示すことで教えている。しかし、教わっている当の子供は、そのようにやってはいるのだが、5mくらいで沈み込んでいく。30分くらい練習を続けるも改善は見えない。

こうしたことは、土日の市民プールでよく見られる風景だ。お父さんの説明は適切である。子供の方もよくまじめに良く聞いている。時々、質問をしている。型と形の訂正も受けている。しかし、5mも泳げないのである。うまくいくはずなのに、うまくいかないのである。

コツは、3歩前のことを確かめてみることである。うまくいくはずなのに、失敗するのはどこかに間違いや見落としがある証拠である。それをどう探して特定するかである。しかしそれは、直近のことや身近なことにはないのである。いや、いうなら、今やっていることは正しいことが多いのである。問題は、それ以前のところにある。

先の市民プールの父子の例でいえば、泳ぎの教え方そのものには、問題は無いのである。しかし泳げないのは、泳ぎ以前に問題があるのである。たとえば、その子は、泳ぐ以前に浮いていないのである。だから、泳ぎを教える前に、浮かび方を確かめさせることである。ちなみに人の身体は浮くようになっており、深呼吸を10回して、細胞の隅々まで酸素を溶かし込み、胸一杯に空気を吸い込めば、簡単にぷかぷか浮く。浮く感覚がわかれば、泳ぐ作業負担は劇的に少なくなる。簡単に浮く方法さえ覚えれば、泳ぐのはもっと楽になるだろう。

まだまだいえる。泳げない最たる原因は息継ぎができないからで、子供には、息継ぎの仕方を説くよりかは、無呼吸が怖くないことを悟らす方がよい。どれだけ息を止められるかを確かめさせ、この時間くらいなら無呼吸でいける、安全であることを覚えれば、息継ぎのリズムもつかめてくる。

勉強においても、「うまくいくはずなのに」を解決するには3歩前を考えてみることである。大切なことは目には見えないという。しかし、本当は自分から見ようとしなかったり、自分から見えなくしてしまっていることが多いのである。大足や駆け足で見るのではなく、3歩前の段階まで戻ってじっくり確認してみる。明らかな見過ごしや気づいていないこと、抜け落ちを見つけることであろう。押してだめなら(身を)引いて見よ、というのは、蓋し、名言なのである。

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