いい勉強

いい勉強とはあるのだろうか。いい勉強とは、調子のよい好調時の勉強なのであろうか。すらすらとテキストを読み、バリバリと問題を解き、過去問も数年分を1日で廻すことができれば、いい勉強となるのであろうか。調子がいいと確かに勉強の量は稼げるが、即断に合格に繋がるわけでもない。

そもそも、不調や調子が悪いのがわれわれの普通である。好調の絶対数は著しく少ない。好調をいい勉強とすれば、われわれはくじ引きに当たるでもしない限りいい勉強をできないわけで、合否は運か不運の問題になってしまう。どうも、好調な勉強がいい勉強とはいえないようである。

では逆に、不調の、調子の悪い勉強を避けることを考えてみる。われわれは、好調の勉強の確保は難しくとも、ダメを避けることくらいはできる。不調の勉強をしないようにすれば、中くらいの勉強を維持することができるわけである。では、不調の勉強とはどんなものだろうか。

いつもの自分の勉強を思い起こせばよい。1ページ、2ページとうんうんうなりながら目を通す、お馴染みの勉強のことである。3ページ進むと、最初の方に何が書いてあるのかわからなくなって、1ページ目に戻るいつもの勉強のことである。こうした、ちぐはぐで、右往左往して、試行錯誤が連続する勉強は、不調というのにふさわしい。それでは、こうした勉強を避ければよいのであろうか。

いや、そうではないように思える。行きつ戻りつする勉強は、自分の弱いところや弱点を知っているが故のペース配分でもある。また、歩みが遅いのは、そこが学習上の難所であって仕方のないときもある。登山で心臓破りの坂を駆け足で登る愚か者はいない。遅い歩みは丁寧にかつ丹念に、地歩を固めつつ進んでいるともいえるのである。ならば、不調の勉強は、必ずしも悪い勉強とはいえない。

また、こうした一見、悪く見える勉強が本試験での自信に変わることもある。あんなにできなかったのに、今はこんなにできるようになった!という肯定的な自己の発見ほど、自信になるものは無い。合否の差は、時に自信の多寡によって覆されてしまうことがある。考えてみれば、不調の勉強も、全く悪いことではないのである。

さて、いい・悪いで勉強を見てきたが、単純にいえないことがわかった。おそらくは、勉強のいい・悪いという評価にこそ問題があるのではないかと考えられる。いいも悪いも、視点が変われば即、意味合いが変わってくるからである。

究極的にいえば、どんな杜撰で適当な勉強でも、合格してしまえばそれがいい勉強になってしまうし、しっかりとした勉強であっても落ちてしまえば悪い勉強になってしまうものなのである。合格しても今後の人生に全く活きない勉強もあれば、不合格の連続で苦戦の勉強が、合格後の人生をぐんと変えることもある。試験を前提にすれば、受かるものがよくて落ちるものは悪くいわれるものである。

われわれはよい勉強を追い求めがちだが、よいと悪いが確かなものでない以上は、それほど求めぬのが賢明であるというのが結論である。しかし、では、勉強を考える上で、何を基準にすればよいだろうか。それは、やはり、われわれに最も影響力を有している「点」をもとに、勉強を見ていくべきではないかと考える。

しかし、点といっても点数ではない。点数で重要なのは本試験ただ1日の点数のみであって、残りの全試験勉強期間では、それほど意味はない。日々の勉強で100点取っても、本試験で59点しか取れなくては意味がない。点というのは、1点についての話である。

われわれは、知っているだけでは1点は取れない。知っているのに、と問題文の前で地団太踏んだ経験は誰しもあるかと思う。知っている個々の知識の前後関係を見、頻出かどうか、重要かどうかの背景をも知っておかないと、1点には近づけない。憶えただけでは、1点は取れない。どんなときでも思い出せるように、もっといえば、問題文を読めば反射で思い出すくらいに記憶を整理して、出し入れできるようにしておかねばならない。問題を解いただけではいけないし、ただ漫然とテキストを読むだけでもいけない。選択肢のひとつひとつをおさえたか、解説を検討したか、なぜ正解したのか考えたか、今日読んだところで不安なところは無いか、わかったところはどこだったかを日記に書けるくらいに意識して読んだのか。1点を追うことで、今以上のことができるようになる。やり方・やり様、意識も深まっていく。

われわれは、100点取る方法はよくはわからないので追わない。しかし、1点を追うくらいなら、われわれの手の中に収まる作業であろう。100人、1000人の人気を博するのは難しいが、ある特定の1人の気を引くことならできる。隣でぐうすか寝ている人の顔を見れば、これまで自分のやってきたことの中に、意外に勉強に資するものがあることに気づくのではないであろうか。

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