平行同時

基本的に、独学はテキストと問題集を平行して進める。通常の、テキストを最初から最後まで読み終えてから、問題集にあたっていくというやり方では進めない。理由は単純で、テキストなんてものは、素人がおいそれと読めるものではないからである。

テキストとは、講師や先生という人が、内容を噛み砕いて砕いて説明して、ユーモアやジョークで飽きさせず、比喩や隠喩や例を挙げてくれるからこそ、読めるものである。しかし、独学では、周りを見渡してもそんな人はいないから、しょっぱなからテキストだけを読むようなことはしない。テキストを読んだら、問題集の問題を幾分か解いていく。

テキストを読んだら、読んだ分、平行して問題集を解く。テキストへの理解や記憶が覚束なくても構わない。問題を解くときは、テキストを見ながら解答してもよい。実は、試験勉強の序盤は、問題集のほうが、まだわかりやすいのである。もちろん、多少は値の張る、解説の充実した問題集を使うことが条件である。

テキストの記述は、問題集の解説を手がかりに迫っていく。テキストを読むだけでは、わかったようなわからないようなことでも、問題と解説を通せば、何がわからないのかくらいは「わかる」。とにかく、問題を解いてみることである。試してみなければ、何ができて何ができないかはわからない。初見の問題でも、テキストを見ながらであれば、曲がりなりに解くことはできる。

また、テキストと問題集を進めるのは、同時であることも忘れてはいけない。テキストを進めるときは、同時に、そのページ分の問題集をも進める。たとえば、テキストを5ページ読んだなら、その5ページ分の内容にあたる問題を解くわけである。しかし、ときどき、同時という意味を、近いうちにと読み違えている人がいる。

今日テキストを読んで、明日問題を解く、というやり方ではない。テキストを読んだら、必ず、本日中に問題を解くのである。逆にいえば、テキストの読みと問題集の演習とがセットになるように日々の試験勉強を進めることになる。たとえば、今日の勉強時間が30分なら、その30分のうち10分はテキストにあて、残り20分を読んだ分の問題演習をするわけである。

テキストと問題集を同時に勉強することは、勉強内容の記憶の定着を促すだけでなく、理解を促進する効果もある。テキストの内容は抽象的なことが多く、一読しただけではわからないことが多い。だから、より具体的な問題集をヒントにして、テキストの記述に迫ったほうが圧倒的に理解は早い。細かいところはあとまわしにして、大枠でも掴んでしまえば、今後の勉強の課題にもなる。

平行同時が、独学での基本的な進め方ではあるが、試験勉強のすべてがそうなるわけではない。平行同時は、試験勉強の序盤から中盤にかけての勉強方法である。ある程度の知識や記憶が蓄積され、試験範囲への視野が広がれば、自分のやるべきところへの重点学習へと切り替えていく。実力が付いてから、テキストのみ、問題集のみ、果てには過去問のみの勉強に入れば、そう落胆することなく、手ごたえを持って取り組んでいけるように思う。もちろん、すらすら簡単に進むわけはないが、試験勉強にありがちな空虚感を少しは減らすことができる。

やる気というのは、理由や目的があるからこそ、しっかり燃焼することができる。(なんで、こんなことをやらなくてはいけないのだろう)という疑問・疑惑に、自分なりの答えをもってこその、やる気である。実は、自分が真にやるべきことは、ある程度、学習を進めてからでないとわからないのである。試験勉強の最初から、自分のすべきことを的確に且つ明確にわかっている人などいない。試験勉強を進めてから、本当に自分にとって必要なことがわかってくる。わかるから、さらにやっていけるのである。要は、いかにして自分が見えるところまでに、勉強を進めるか、もっといえば、勉強を続けることができるかなのである。試験勉強は、峠を越えれば楽になるというのは、裏にこうした理屈があるのである。

よくあんなに勉強できるなあ、という人を、見聞きしたことがあるだろう。勉強だけに限らない。(よくあんなに○○できるなあ)という人を何人も目にしたことがあるだろう。そうした、あんなに○○な人は、きちんと自分の必要性を自覚している。妙に仕事をがんばっている人は、独立を胸に秘めているものである。妙に愛想のいい子は、何かの夢(野望)を心中に抱えているものである。

必要性の自覚は、試験勉強を続ける要である。自分に必要なものがわかるまでは、続けられる勉強で続けていき、本当に大切なものがわかれば、それに応じて、集中して取り組む。義務感やありきたりの理由を用意するだけでは、己の欲するものはわからない。己を知るとは、実は、楽する道なのである。

ページの先頭に戻る ホームに戻る

 

 
         
コラム一覧でございます
過年度の古きコラムでございます
    
当サイトに掲載している情報は、当サイトがその内容を必ずしも保証するものではありません。 情報の活用は利用者各自の責任の範囲内でお願いいたします。すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

----- Copyright (C) 独学のオキテ?くらげ (:]ミ All rights reserved -----