虫食い

独学の序盤では、テキストに重きを置かない。どちらかというと、問題集のほうを試験勉強の中心にする。テキストは読むことは読むが、問題集を足がかりにして読む程度に済ませる。つまり、テキストは、問題集にでたところ、問題に該当した記述をしっかりと読み、そのほかの記述はさらりとおさえるだけに止めておくのである。

しかし、このようにテキストを断片的に読んでいると、うろおぼえ、全体がつかめない、理解が不足する、中途半端といった問題が生じる。しかし、こうした問題は解決しようと思えば、解決はできる。たとえば、テキスト読解を学習の中心にしたインプット学習を行えば問題は解消する。しかし、独学では、「まずテキストありき」の学習だと、テキストの無味乾燥さと難解さから、学習放棄・挫折のリスクが非常に高くなるのである。独学は、試験勉強の放棄の方を、テキストの虫食いよりも重視する。

大体において、試験勉強の序盤で勉強をやめてしまう人は、テキストのインプット学習の罠に思いっきり引っかかっているものである。インプット学習を進められる人は、講師や教師にあたる人が身近にいるか、それか、予備知識・前提知識が豊富な人だけある。初学者・素人なら、インプット学習は、問題演習のアウトプット学習よりも困難であることを理解しておくべきである。

インプット学習をしないため生じる、テキストの虫食い状態リスク(うろおぼえ、全体がつかめない、理解些少、記憶不足、中途半端)と、この学習挫折リスクとを比較してみれば、重大なリスクは、学習放棄に繋がる挫折リスクなのはいうまでもない。それに、勉強効率の面からいっても、序盤にテキストをしっかりやる必要はない。実をいうと、テキストの効率のよい勉強は試験の後半期なのである。

虫食いになったところは、あとで各個に潰せばいいし、虫食いの部分を復習のメインに据えるのもいい。個人的な経験からすれば、テキストの虫食いなど、あとでいくらでも、何とでもなった。問題演習がにっちもさっちも行かなくなってから、テキストをじっくり読むようにしても、十分に間尺に合うというわけである。当たり前であるが、本を読むにも読解力は理解力、筋立てを読み解く力があったほうが面白いに決まっている。テキストも同じようなもので、問題集演習や過去問演習をしたあとのほうが、テキストはわかりやすいし、飲み込みや記憶も速いというわけである。

リスク管理というと大げさではあるが、損得勘定で考えていく。テキストの虫食いリスクは対応可能である。しかし、もう一方の学習放棄・挫折のリスクは、そうはいかない。無意味にしか感じられない作業を長時間続ければ、どれほどやる気が溢れていても、1週間もたてば勉強自体をヤメたくなる。この「ヤメ感」に対処するには、実力は拙いまでも問題集に挑戦し「できる」実感を味わうことが大切である。どんな資格試験であれ、学習の実感がなければ試験勉強そのものが放棄されてしまう。せっかくインプットしたものも、勉強自体が放棄されてしまえば何の意味も持たない。試験勉強の放棄の原因は、知性や忍耐力がなかったから挫折をしたのではなく、挫折するべくして挫折する構造があるわけである。

試験勉強の序盤にテキストを重視しないのであれば、では、何をするのかというと、基本的な問題が詰まった問題集である。実力未発達ではテキストを読むことができないのならば、曲りなりにでも問題集から手をつけていこう、というわけである。

ただ、問題演習中心の勉強は、テキストのインプットだけの勉強に比べると、桁違いに作業の負荷は高くなるし、日々の勉強は遅れがちになる。テキストを見ながらとはいえ、問題ひとつ、いや、選択肢のひとつを検証するだけでも多くの時間と労力を払わねばならない。そして、検証の傍ら問題を解くために必要なことは憶えていかないといけない。めんどくさいことはめんどくさい。

しかし、テキストを見ながらであれば、どんな問題集でも曲りなりにでも解けるものである。問題演習中心の試験勉強なら、無味乾燥なテキストとにらめっこをするよりも、遥かに刺激の強い勉強ができる。もちろん、刺激の強いほうが記憶に残りやすいし、吸収も早い。問題集から進めていくのは、学習放棄のリスクを軽減するためである。テキストの1文を読んでもあまりぴんとこないが、問題集の1問はやった感じがするものである。

試験勉強の常識からすると、テキストをおさえてから問題集へと駒を進めるが、独学ではそうはしない。まずは、問題集からである。問題集の演習と解説を通して、テキストの内容に踏み込んでいくのが独学のスタイルである。問題集からやる、表面的にはこれだけの話であるが、持てる自分の力を発揮せざるを得ないのはこちらである。自分の力を信じざるを得ないのが独学である。窮鼠猫を噛むというが。

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