受け流し3通り

試験勉強には、プレッシャーがつきものである。長年、勘違いをしていたことがある。プレッシャーとは、なくせるものだと考えていた。幼少のころは、みぎりにアニメの一休さんを見、手塚治虫のブッダを読んでいたものである。(悟りを開けば苦しみから解放される。ならば、多くの苦しみは自力でなくせるものだ)と思うのも不思議はない。

しかし、今になって思えば、その悟りを開くのに実にたいへんな思いをしなければならないわけで、今では種々に苦しむほうが気楽だと思ったのである。プレッシャーをなくそうとしたり、感じないよう努力したりするよりも、ちゃんと受け止めて流した方がはやいのではないかというわけである。そこである。どうプレッシャーを受け流すかである。プレッシャーの勢いを和らげる3つの方法を見ていきたい。

受け流し方のひとつ目は、平均的に考えることである。人間というのは、他人を過小に評価して、自分を過大に評価するものである。人生訓や指導訓、教育論に「ほめよ」「良い所を見つけよ」というのがある。それも、得てして己というのは他人を過小に見ているために、その修正を図っているのである。他人の肯定評価は、他人のためにあるのでなく、己の目の至らなさのためにあるのである。

なぜ、平均的に考えるのがプレッシャーの受け流しに資するかというと、自分への評価を減じるからである。自分の頭脳を過大評価した結果、手に負えない勉強量や要求を、自分に課しているものである。自分はそれほどできるものでもなく、才能も努力も人並みであると考えてみる。

試験には平均勉強時間というものがある。だいたいこのくらいの勉強時間を取れば、合格できますよという統計時間のことである。平均的な人間は、その平均的な時間の勉強をすれば、平均的に合格できるものである。自分は平均的な人間と見直すことで、気負いや焦りを正していくのである。プレッシャーは、できもしないことを(できる!)と思ってあがくことから高まっていく。平均像を自分と重ね、自負心に括弧がけをすることで、プレッシャーの強化を阻止するのである。

ふたつ目の流し方は、一覧化・リストアップ方式である。プレッシャーは感情に作用するもので、感情が高じると理性的に考えられなくなる。理性的というのは、難しいことではなく、数を数えられなくなることだ。怒りに震えたときに財布の中を覗いてみよ。普段は数えなれている1万円札の10枚すら数えられないものである。実は、数の把握は、現実認識の基本なのである。アレもコレもと気が急いていると、何ひとつ終わらないことがある。それは、何を何個すればよいかわかっていないからなのである。

プレッシャーを強く感じ始めたら、今やらなければと思うことを紙に書きだしてみることである。いっぱいありすぎて書けないといっても、30に満たないだろう。また、紙に面しても書けないという人は、まず10個、書き出してみる。そして、20、30と書いてみる。なかなか数を書けないものである。たった10個書こうとしても、頭を捻らないと出てこない。逆にいえば、それくらいのものしか、やるべきことはないのである。無限にたくさんあると思われていたやるべきことも、紙の上に書き出してみれば、たったのそれだけの数である。プレッシャーの正体もそれだけなのである。リスト化したものをひとつひとつ潰していけば、プレッシャーも和らいでいくであろう。紙に書きだすことでプレッシャーを上手に流すのである。

3つめは、オセロ風の認識である。周知のとおりオセロは、駒の白黒がすぐに変わるゲームである。あっという間に、3つや4つの駒の色が180度変わる。プレッシャーをオセロに見たててみよう。考えてみてほしい。いま感じている強いプレッシャーを、1年前に感じていただろうか。1ヶ月前、1週間前でもよい。振り返ってみれば、当時に今感じているプレッシャーなんてないものである。ならば、1年後にはなくなっているだろうし、1ヶ月・1週間先にはなくなっていることのほうが多いと考えられる。いまのプレッシャーは、先々にはオセロのように変わってしまいかねないものである。そのプレッシャーに拘泥することはないのである。何でも変わる、変わっていく無常の時間感覚でプレッシャーを眺めてみるがよい。思えば、かつてのイヤなプレッシャーが今になれば、役立っている、いい方に働いていることも多いだろう。(そんなもんだ)と、プレッシャーと距離を設けることで受け流すのである。

結局、わたしたちが求めるのは、強いプレッシャーがあったとして、ちゃんと成果の伴う勉強ができて、最後には落ち着いて本試験が受けられればよい話である。プレッシャーをなくせないのなら、顔色を悪くする前に建設的に使うまでなのである。

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