プレッシャーについて

武者震いという。本試験が近づけば、それなりに勉強した者からプレッシャーが強くなる。合格を目指して勉強してきたのだから、仕方のないことである。プレッシャーを感じないのは、まったく勉強をしていない人だけで、そういう人は基本的に問題外である。

高い緊張や強いプレッシャーを感じるときは、それこそが実力の証拠といってよい。たとえば、100の労力で合格する試験があるとする。勉強量が10や20の人にとっては、プレッシャーなど絶無である。ややプレッシャーを感じるのは70前後の人で、がんばればまだ合格圏に滑り込める。比較的に気が楽なのは、80〜120くらいの労力を払った人である。本試験へプレッシャーを感じてはいるが、やるべきことはやったという感と落ち着きとがある。

強烈なプレッシャーがあるのは、150〜200の人である。勉強とは、とどのつまり積み重ねと量であるから、勉強すればするほど実力は向上し、合格レベルを超えたところまで伸びゆく。しかし、「合格して当然」のところまで勉強してしまうと、逆に本試験へのプレッシャーは高まってしまうのである。当然のことを当然のようにするというのは、精神的に実にきつい。試験は水物であり、問題が何かわからない以上、合格に当然も100%もないのだが、頭でわかっていても相当にきつくなる。

こう見ていくと、勉強をし過ぎてプレッシャーを受けるよりかは、80〜120程度のほどほどラインがよく見える。しかし、そうではない。プレッシャーというのは、じつは、追い込みの原動力になるからである。逆にいえば、気楽モードに入っている人が危険といえる。

油断大敵という。試験勉強においては、追い込みのパワーはすさまじい。「三日遭わざれば括目してみるべし」というが、後順位の者が追い込みに効を奏すと、ほどほどラインにいる人はあっという間に追いつかれて、合格の席を奪われてしまう。実際に、短期集中決戦を得意とする人はいるもので、すさまじい集中力を直前の追い込みに充てて、言葉は悪いが、短期間の勉強で合格をかっさらっていく。

勉強をしっかりとみっちりとやってきた実力者には、合格への強烈なプレッシャーがある分、追い込みの勢いが強くなる。そのため、往々にして実力はさらに強化・補完され、より安全で安定なゾーンに突入して、合格が磐石のものとなる。やはり、勉強すれば合格は一層近いものになるのには間違いがない。

プレッシャーのすべてが悪いわけではない。まったくのゼロにすればよいものでもない。プレッシャーがないと、追い込みをかけられなくなってしまう。合否に決定的な影響を与える追い込みである。泣いても笑っても、1ヶ月間の追い込みで試験の結果はがらりと変わる。直前期の過ごし方を左右し、本試験の結果を変えてしまうのが、プレッシャーなのである。

プレッシャーが悪いのは、エネルギーの方向性が間違っているときである。プレッシャーを上手に受け止められないと、心身に様々な影響を与える。プレッシャーの影響を強く受けすぎると、たとえば、プレッシャーで心がいっぱいになり、不安で押しつぶされそうになったり、きちんと考えをまとめられなくなったり、凡ミスや馬鹿ミスを注意していても続出させたり、問題文がしっかり読めなくなってしまう。過度のエネルギーを正面からまともに受けているといえよう。

また、勉強の方は調子がよくても、顔色が悪くなったり、食欲不振に陥ったり、夜によく眠れなくなれば、これまたプレッシャーを裁ききれていないといえる。それでは、上手にプレッシャーと付き合うにはどうしたらいいだろうか。様々な方法が考えられるが、プレッシャーのはけ口をシフトするのが、最も手軽で効率がよい。

ところで、追い込みの勉強であっても、大切なのは、基礎や基本を中心にした勉強である。テキストをしっかり読み直すことや、過去問をもう一度解き直すことは、追い込みの必須といわれる。実際のところ、追い込みは基礎や基本事項の総復習が多く、そう難しいことはしない。それでは、なぜ、基礎や基本を重視するのがよいのかというと、それらがプレッシャーのはけ口として適しているからである。

これまでの勉強で、10分から20分程度で読めるテキストの基礎的な記述や問題集の基本的な問題を、1時間ほどかけて丁寧にやってみてほしい。そうすると、見落としていたことや忘れていたことは元より、これまでには見えてこなかったこと、気づかなかった事が見えてくる。忘れていたことや確認したいことは芋づる式に生まれてくる。小手先のひねくれた難問や些細な暗記をどれほど続けても、プレッシャーは十分に消化されない。基礎や基本の勉強には、プレッシャーを吸収する十分な深さと広さがある。基礎や基本の勉強を続けるのは本試験への対策だけでなく、プレッシャー対策のためでもあるのである。

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