マンネリに潰される
独学は難しいという。独学だと挫折するという。そうだろうか。「独学で〇〇を合格したよ」といえば、「凄いね」と返される。しかし、それは本当だろうか、何が凄いのだろうか。独学はひとつの学び方である。凄みもヘチマもない。専門学校に行っての合格なら凄くなくて、独学なら凄いというわけでもない。実際には同じ「合格」である。独学だから余計によいというわけでもない。おまけがつくわけでもない。合格証書にそう書いてくれるわけでもない。 独学=凄いと考える人は、想像力が貧困である。多くの人が、勉強を「授業」の延長戦に見ている。わたしたちのほとんどは、授業という教育システムに慣らされてきた。魅力がない教師、使い古されたノート、つまらない教科書、延々に聞くだけの60分。勉強はガマンして過ごすものだと思っている。独学だと凄いという人は、つまらない授業の経験が身にしみているのであろう。勉強とは、黙々と耐えるものとしか思っていないのである。 学校でするようになれば全てだめになる、という。学校が認めるともうだめになる、という。学ぶことがつまらなくなったのは、授業というシステムによると考える。代表は古典である。古典をことごとくつまらなくしたのは授業である。枕草子など千年前のエッセイが色あせずに読めるのである。それがどれだけ稀有なことなのか、敢えてそれを教えない。世のエッセイストに聞いてみよ、千年の後に自分の文章が読まれるか否かを。 多くの人が音楽の授業でクラッシクを聞かなくなる。音楽という授業は音楽を嫌うように仕向けているのだろうか。わたしは後年になって、こんなに豊かな世界があるのかと驚いた口である。大損である。マンガが最近では全国の小中高で解禁された。これで一層マンガはつまらなくなるだろうし、もうつまらない。早晩だめになるだろう。 独学というのは、授業の延長にあるのではない。別個のものである。想像力が足りないというのは、「もうそろそろ、授業だけに勉強観を縛るのは止してみれば」といいたいのである。 独学というのは、極めて自由な学び方である。自由過ぎて戸惑うほどである。そして矛盾もしている。独学は、はやくしたりゆっくりしたりする。適当に進めたり、詳細に掘り下げたりもする。大胆にしたり、細心に読んだり、ノートを取ったり取らなかったりする。一気呵成にガッと毎日数時間費やせば、1日30分程度で勉強を済ませる時期もある。独学とは適当に矛盾しているのである。 仏のウソを方便という。独学がうまくいかなかったまじめな人には、こうアドバイスするだろう。9時から11時まで、1日2時間という風に厳密な計画は止めましょう。1日数ページといったノルマ制度もやめましょう。もっとアバウトに捉え、大きな期限だけ設けそれだけに間に合うようにしましょう、というだろう。 独学がうまくいかなかった人で、性格がルーズな人にはこういうだろう。勉強する時間をキッチリ決めよ、その時間がくれば何があっても机に向かえ。30分単位で細かく計画を立てよ、小さな締め切り、小さな約束を厳守せよ、というであろう。 独学は、定時、定時間、定型の事務作業ではないということだ。逆に、独学が粛々と事務のように進むようになると、マンネリしたといえる。マンネリとは、"マンネリズム・英:mannerism"を省略形にした和製英語。型にはまった事柄や手法及び態度・様子を意味する。(- Wikipedia -) マンネリが全てを潰すのである。自由度の高さを独学の特色としているのは、定型化されればスグに腐るからである。授業と化すからである。マンネリは破壊的な影響がある。独学に限定されない。学ぶことの大敵がマンネリなのである。同じようなことを同じようにやらないといけないのが、試験勉強の辛さである。勉強とはマンネリの塊である。マンネリな作業をしなければならないのに、マンネリ化された行動で接すれば即飽きてイヤになるのも仕方がない。独学のムズカシさとは、マンネリにあるのである。 わたしは朝型であり、また昼勉派でもある。夜のゴールデンタイムを利用する夜型でもある。カフェの愛好者であり、柄の悪くない街中のファストフード店、雰囲気のよい喫茶店を知っている。電車の中での勉強といえば、散歩中にあれこれ考えたりする逍遥学派でもある。 マンネリが全てを破壊する。もちろん学習の大部分は、自分の部屋の飴色に光る机でなされる。しかしそこだけではない。なぜ哲学の道があるのか。机の前だけでウンウン唸るだけでは哲学できないからだ。散歩は気晴らしのためである。机の前に居続けるのがどれだけ思考の邪魔かを大胆に物語っているではないか。 マンネリを防ぐには今日1日、何か新しいことをやったかと自問することである。なんかやったかな、と思うのみである。ゴウゴウと流れるマンネリの波が見える。目新しいことを何ひとつしない我を見て、ぞっとするだろう。 |
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