勝手解釈半わかり

もちろん、基礎基本がしっかり理解できていないと先へ進めない試験もある。たとえば、基本情報技術者での「?.コンピューター科学基礎」の乗数計算がある。2進数から8進数、16進数への変換は、反射反応のレベルまでやりこまねばあとあと苦労する。基礎科目が重視される試験は、理数系の資格に顕著である。逆に文科系資格であれば、基礎はあとで済ましてもよいものが多い。

試験勉強は、先へ進むことが大切である。わからない箇所があってもドンドン先へ進み、最後まで到達して細目詳細を仕上げてもよい。わからんリストを作っておき、わからんページを控えておけばいい。

仕事と試験勉強が違うのは、この適当さである。仕事では、各工程をおざなりにできない。一転、資格試験はそうでもない。勉強中盤までは虫食い状態でも、十分間に合う。全体がボンヤリわかって出題の肌触りを掴んでから仕上げても許されるし、またうまくいくことが多い。最初からキッチリしあげようとすると余計にワケわからず手間時間を費やすハメになる。

独学の最大のリスクは、挫折のリスクである。途中でやめるようなやり方より、続けるやり方を優先する。であるから、わからないものはそのまま後回し、先送りを推奨するのである。

大概のわからないモノは、中盤以降になって「アア、ソウカ」と合点が行くものである。たとえば、行政書士や宅建の民法で皆が引っ掛かる「法定地上権」がある。人間、「法定地上権」など知らずに生を育み、そして死に行くものだろう、これからもこれまでも「法定地上権」は必要とされないだろう、今ここだけの話で、降って湧いた話であろう。何用あって法定地上権。

オイラは「法定地上権」、一読してわからずウンウンあたまを唸ったことがある。そして、後になってなあんだ、と思った口である。試験脳とでもいうのだろう、問題演習やテキスト読みを続けると、蓄積された知識に化学変化が起き、スラリンとわかるものである。「法定地上権」は、勉強後半で何故アタマを悩ましたのか?と思ったわたしであった。そうでないとダメジャン、と。

この経験から、むりやり理解しようとしても無駄なもの、時間と経験の蓄積からスッキリ理解に至るものがあるのだと悟ったのである。そのときばかりはどうにもわからない。

しかし、わからないものをそのままにしておくことに不安を思う人もいるだろう。わたしも同じ口だからこそ、ウンウン頭をひねったのである。昔の自分に助言するとしたら、これまでの知識や経験、見聞を総動員して、こういう事とちゃうかと見当つけておけ、ツバでもつけとけ、とでもいうだろう。

試験合格には、「正確な知識」「正確な理解」が要求されている。しかしこの文言だけでは、しょっぱなから完成を目指してしまう人がいる。0の状態から、完全正確の状態100%に至らんというわけである。

わたしは考える、「正確な知識」「正確な理解」は本試験の数時間にさえ発揮できればよい、と。最後の最後のときにキッチリできればよいのであって、本試験までには期間の利益があるものである、であるから、0から0.2、0.5までいってマイナス0.4まで戻ってアラ大変と0.6くらいに戻して、ようやくヤレヤレ100%の「1」になればよからんと思う口である。

わからない箇所など、勝手に解釈するなり見当をつけるなりしておけばよいのである。間違っていたって困るのは自分だけだし、間違いを発見すればそれも勉強である。最初から純度100%の知識を、雑多なもので一杯のアタマに詰め込むほうがしんどかろう。

ハッキリいえば、わからなくて当然なのである。試験勉強開始の1ヶ月2ヶ月で、理解できる方が不思議である。試験の語彙や世界に慣れていないのであるから、思考量のパイ自体が小さかろう。どんなに考えてもお猪口くらいの思考しかできないものである。ウンウン考えてもお猪口の思考である、せめてワイングラス程度になって考え込んでも遅くはない。

うーん、わからんと考えてみて、テキスト・解説を読み込んでみて、飛ばそうと思っても気になって仕方ないなら、2時間まで考え込むがいい。そうすれば、キッパリ蹴りをつけられる。そのときウンウン唸るだけでなく、先ほどいった見当をつけておきさえすればよい。解決は後。ロゴスはロゴスを呼ぶ、冒険のロゴスが始まる。時間がすべてを解決するのは、真理なのである。

世にわかったような顔をした人が多いのも、こういうことなのである。知ったかぶりが多いのも同様の事情である。みなが皆「わかる」途中の過程にいるのである。内心では(こーいうのとちゃうかいな)と思いながらのしたり顔なのが世の実情である。テレビを見よ新聞を見よ。

こういう人が多いのだから、わからないを何も恥じることはない。「わからない」にひとつの見当でも加えれば、わかったような顔をして枕を高くして寝ればいいのである。

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