しないこと
たとえば、健康法である。〇〇は体によい、××は脂肪を燃やす、△△は疲れを取る。健康法は列挙の暇がない。健康法の切り口も多い。食べ物からエクササイズ、地方の食べ物・飲み物まで、もはや何でも健康法になりうる。ラジオ体操健康法、タオル健康法、ボール運動、軍隊式新人トレーニングまで、なんでもありである。 沖縄の人は長寿という。長生きの理由、健康の秘訣を雑誌やテレビでは紹介するが、その土地にはその土地の事情があり、風土があろう。当たり前だが、人もその影響を受けて生きていくし、これからも生きていく。米どころ・水どころの人は都会の米や水を口にして絶望する。魚のおいしい地方出身者は怖くて都会の刺身定食など食べないだろう。香川県出身は他県ではうどんをまず食べない。食べられないからだ。一口啜ると悲しい顔をして異郷にいることを知る。薩摩の人は愛知の赤味噌には慣れないだろうし、逆に名古屋人は甘ったい味噌には眉をしかめるだろう。ある特定の部分だけに焦点を当てても、ほかの人であるわれわれができる保証はないし、いくらあっても続けることにはならない。 先ほどの沖縄の話に戻れば、沖縄の人がなぜ長寿なのかを調べるよりも、沖縄の短命な人を調査して欲しいのである。何の理由で儚くなったのかをリストアップして欲しいのである。何の怪我が多いのかを知りたいのである。交通事故がらみか、ハブに噛まれたのか、喧嘩なのか、そういう細かいことである。病気ならどういう病気が多いのか、なぜその病気になるのかの因果を知りたいのである。沖縄にはアルコール中毒の比率が高いという。さんさんと輝く太陽に新鮮な食べ物、そして泡盛とくればわからなくともない。そして外からは見えない、沖縄独自の負の部分もあろう。 われわれは、沖縄の人が健康でない理由を知るほうが、はるかに自分の健康の参考になる。健康であることより、健康でないことのほうが真の健康に資するのである。「沖縄では、うまい空気と水と食べ物のため、アルコールを過剰に摂取してしまう。そのため喧嘩や交通事故が絶えない。また飲みすぎは仕事にも支障をきたす。故に失業しやすい。沖縄でもてはやされている事が、諸々の不幸をの遠因となる」と知れば、アルコールの飲み過ぎはいけないのだと節制の糸口になろう。 これほど多くの健康法があるのに、なんとも不調なのは、健康を追求するからである。健康法を求めるより、健康グッズや道具を求めるより、実は不健康を避けるほうが、健康には資するものである。 一利を興すは一利を除くに如かず、という。新しく何かをやるよりも、既存の古いものを何とかせよというわけである。たとえば、試験勉強をする人の多くが味わうのが不眠である。どうしても夜遅くまで試験勉強が及んでしまうため、脳が覚醒したママ布団に入るからである。 眠ろうとしてさまざまな薬を模索するよりも、お茶やコーヒーを過度に飲まないようにし、カフェインの過剰摂取をしないようにする。寝る前に高度な難しいことをしない。頭を使わない丸暗記をする。このように、何かをしないほうが問題の解決は早い。 多くの宗教では、「〜する勿れ」という。殺す勿れ、盗む勿れ、浮気をする勿れ、という。「しない」ことを列挙するほうが、やりやすく、万人に述べやすいからである。 「しない」は、行動が確実にわかる。極端にいえば身体を何ひとつ動かさなければよい。反対に、「する」は複雑だ。アアしてコウしてとやる作業はたくさんある。ミスする可能性も大きくなる。 独学のテーゼがある。それは「しない」ことである。「憶えなきゃ」より「こうしたら憶えない」を追求すべきである。どうしたら憶えないか、よくよく考えてみることである。「あ!」と記憶を妨げている障害を発見することだろう。理解について同様で、「こうしていけばまず理解しない」やり方を見つけるのである。「やる」はたくさんだが、「しない」は数が限られている。 モーゼの十戒は、10個しかない。人間は言うほど失敗はしない。失敗は7回までで、7つの事例に収斂される。ある特定の分野で7回も失敗すれば、多くを避けられるようになる。世の悲惨な代表に倒産があるが、倒産も原因を単純化すれば、過大な負債と設備投資、余剰人員の3つに絞られる。借金しない、人を雇わないに徹すれば、倒産しないことになる。離婚原因も多くて7つだ。 エジソンはたとえ失敗しても、できない方法がひとつ判明したのだ、といった。彼自身も最初は悔し紛れであったろうと想像する。誰しも失敗はいやなものだ。しかし、だんだんとことに習熟するにつれて、失敗とは不可避的であり、そして失敗することから先へ進めることがわかったのだろう。 7転び8起き、という。「しまった」と思ったら、「あと6回の失敗で終わりだな」と数を数える。あれこれ求めるよりも、最大7つの「しない」ことをせずにいることである。 |
適当なコラムでございます
コラム一覧でございます
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・2004年4月〜2006年3月(全36コラム)
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