リスク
メリット・リターンを見逃して、資格試験を語ることはできない。「利」があるこその勉強である。さもなければ、こんなことできっこない。何十年か生きてきて、1度も触れた事のない言葉や用語など、今後十年、役に立たないことは目に見えている。それを何ゆえ苦労を重ね、こせこせ憶えねばならぬのか、とういうわけである。 メリット・リターンと前面に出すと、話がクリアになる。こういう利があるから、この苦労は引き合う、故に受験する、というわけである。昨今は資格が自己投資という観点で語られている。勉強も、自己への投資になったのである。あっぱれ、自己。しかし投資というなら、リターンとメリットを語ると同時に、リスク、そしてコストも考えねばならない。 メリット・リターンを考えるなら分母が大切である。株式投資で1億儲けたといっても、原資がいくらかで、話は大きく変わる。100億の原資で1億なら、そのファンドマネジャーは首だろう。たかだか1%の利である。100万円で1億ならすごい、掛け値なしですごい。多くの人は元手がいくらかを見失いながら、額だけ見てよだれを流している。もちろん、期間の考察も重要だ。10年かけて1億なら信用がおける、それが1年や半年なら赤信号である。若くして年収1千万を超えている人は、かたぎではない。それと同じ理屈である。分母が大事なのである。見た目の分子だけを見てはいけないのである。 ある人がうまくいったからといって、1/100と1/1000の分母では大きく違ってくる。可能性は事実の問題である。1将成って万骨は枯るものである。 結局のところ情報とは、よいこと・うまいことしか書かれないのである。いや、そうとしか書けないのである。ウソではないのである、事実ではある。成功談、それはウソではない、紛れもない真実である。しかしソレは一部の真実である。隠したことが多くなれば、限りなく偽りに近づく事になろう。 はっきりいえば、真実というのはつまらないものである。寝起きの顔が真実である。真の真実の益は、偽りのままの益とは較べようもない。真実というのは、得てして隠れていくのである。 誰もいわないので敢えていう。試験勉強のリスクは、お金や時間だけではない。性格のリスクがある。性格が歪んでしまうのである。試験勉強に励むと、性格がせせこましくなる。どーでもいい手続きに拘泥するようになる、ここは原子力発電所の制御室かと間違えんばかりに細かなことに執着するようになる。試験に勝てないからだ。 試験が有名化し、受験生が集まり難易度が上がると、問題が変化する。試験の試験のための試験による試験のためだけの問題が採択される。その道の10年のプロに尋ねたら「?」と首をひねる出題が多くなる。どんどん実務からかけ離れる。しかし試験である以上、そんなことでも理解し憶え、内容を咀嚼せねばならない。そこで、性格の問題が顕著に現れてくる。 試験という世界でしか通用しないと割り切り、試験が終われば、そういうものだったといってゴミ箱に捨てる人が大半であるが、しかし「受け取り方」というのがある。ハガキ一枚にも受け取り方があり、レシート一枚にも受け取り方があるように、試験勉強の受け取り方を過つ人がいるのである。 試験のひねくれが、水にあってしまう人がいるのである。人は、フィルムが感光するように感応されるものである。師を選べ、友を選べ、配偶者を選べ、とは、どうしても有形無形の影響を受けるからである。試験勉強も例外ではない。 聞かれてもいないウンチクを語りだす。聞いてもいない能書きをしゃべりだす。個人的には「スイッチさん」と呼んでいる。アーダコーダ言い出すと「お、スイッチが入ったな」というわけである。 このような人が表れるのも、試験のひねくれと馬が合ってしまったのである。答案相手にする事を、人間相手にしているのである。それは困るし、間違っている。「who」と「what」という中学生英語を間違ってはならないだろう。われわれとしては、ねちねちとした小言が、性格のひねくれのバロメータである。小言めいてきたら、赤いパトライトが点滅しているといっていい。古人は、日々、3たび省みるといった。 われわれは、学べるものしか学べないものである。試験勉強であっても得るものはある。しかし、試験勉強の全部の全部を吸収せずともよいのである。試験制度からのダメな部分などは捨て去ればよい。試験後は、忘却の彼方へ押し流すだけである。 1個か2個の目がひらいたことを大切にして、うまく芽を出させるのが試験勉強の次のステップである。今までの試験勉強とは、戦いの質が違ってきているのである。試験は細々した事を相手にせねばならない。が、小さな事に熱中してしまうと得てして大概、大きな事ができなくなってくるものである。古人は、学んで思わざれば、即ち罔(くら)し、といっている。 |
適当なコラムでございます
コラム一覧でございます
・資格コラム・レジュメ版
バックナンバーでございます
・2004年4月〜2006年3月(全36コラム)
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